2021/01/17 14:00





~書き終えてからの追記。

まさかこんなに長く書くとは自分でも思っていなかったのですが、書いている内にどんどんディテールまで書きたくなり(わるいクセです)、次第に文章が長くなっていったこのエジプト記。

読み返してみると2記事目あたりまではかなり色々なことをはしょってしまっているのですが、ゆっくり書き直す気力もないのでそのままUPしました(笑)

ふいに思い立って書き始めたこの回想記ですが、途中から何か「書かねば」という勝手な使命感に駆られて石のUPより優先して書いてしまいました。この旅からちょうど一年が経ちましたが、何か整理が必要だったのかも知れませんね。

単に石をご紹介している人間なので、個人的なことを綴る必要はありませんし控えているのですが、たまにはこういったものもいいかなと。ご興味の方はおヒマな時にでも気軽に読んでくださればと思います。

初めの方は流れとテンポがつかめず文章もフォトの貼り付けもかな~り大味で恐縮ですが、じょじょにテンポをつかんで文体も安定してきます(大体3記事目あたりからスリリングでアドベンチャブルな展開になってきます)。

Crystal Journey(クリスタルの旅)と名付けた通り、約一ヵ月に渡るエジプトの旅は様々な石との、不思議で、素晴らしい出会いの連続でした。つたない文章ではありますが、楽しんで頂ければと思います。

こちらから各回のリンクを張っておきます。


以下、本文になります。



大変ありがたいことに、虹石屋のつたないブログを楽しみにして下さっているという方からたまにお言葉をかけて頂けることがあります。

そんなこともあって、たまには長いブログをシリーズ記事として書いてみようかななんてふと思いつきました。




石屋なので、石に絡めて旅のことでも書いてみようかなと。
折しもこの数日、ちょうど一年前に旅していたエジプトのことを思い出すことが多く、こんな時期で旅にも出れませんし、回想記のように。




今思えばこのエジプトの旅に出る数週間前に「石屋をやれたらいいなぁ」などと漠然と考え始めていて、その旅を終えた後、ごくごく自然な流れである石たちが手元にやってきて、そこから始まったのが虹石屋でした。

思えばエジプトの旅はさまざまな石との出会いの宝庫でした。




そんなことで、とても素晴らしかったエジプトの旅を、道中で出合った一期一会の石たちに絡めて綴ってみたいと思います(一回目のこの記事はほとんど石と関係ないですがご容赦ください・笑)。




それでは、おヒマ潰しにどうぞ、というスタンスで、お気軽に読んで頂けましたら幸いです。こちらも気負わず流れるままに書いていきたいと思います。


織矢






Crystal Journey① ~エジプトへ篇~


サウジアラビアの濃厚な匂いがむんむん立ち込める真夜中の空港を経由して、まだ日の白み始めたばかりの早い朝、カイロの空港へ降り立ちました。

エジプトは砂漠の風景から年中暑いようなイメージがありますが、冬はごくごく、当たり前のように寒いです(何といってもエジプト人も寒がっていますしね)。

カイロ市街行きのバス乗り場がわからなすぎて、そこいら辺にいる優しい人に尋ねつつカイロのタハリール広場へ。ちょうど朝日が昇る中、オンボロバスに乗ってエジプト人にまぎれてカイロの街を走る時間はとても素敵でした。

旅の感覚が戻ってくる。この訳のわからない濃厚な匂い。







(カイロで泊まった安宿。バルコニーからはカイロタワーが見えます。暖房がないので夜はとにかく寒かった)







カイロの適当な宿を決めて、荷物を置いて、ひとまず歩いてすぐの考古学博物館へ(ここの入口でばったり中田英寿に遭遇したのだけど、あれは一体なんだったのだろう。笑)。














ミイラ、ツタンカーメンのマスク、石像やレリーフなど、目を引く古代の遺物たちがテレビで観たままそこにあるのは歴史を感じるようで不思議な体験でした。

ところで、エジプトの三大ピラミッドのオリジナルは、その昔は白亜の姿だったそうです。そのトップ(頂点)には「キャップストーン」と呼ばれる石がカバーされていました。








ギザのピラミッドのものかは忘れてしまいましたが、この写真のものがそうです。

ピラミッドが白亜の姿だったとは想像するだけでなんとも壮麗ですが、岩座信仰やストーンヘンジなどもしかり、人類は、昔からこうして石や岩のちからを借りて、そこを特別な空間や場所としてきました。

それは鉱物だけでなく、石や岩にも、もともと何か見えないパワーがあるゆえで、昔の人はそれをわかっていたのでしょう。




その翌日、念願だったピラミッドへ。

クフ王のピラミッドの中。その玄室で、ずっと忘れないであろう素晴らしい体験をすることができました。




まるでタイミングも何もかも仕組まれていたように、けれどごく自然な流れで、当たり前のようにそれらのピースがカチリとはまっていくようで不思議な、けれど当たり前の体験。




ピラミッドは実物を目の当たりにするとその荘厳さに圧倒されるし感動もしますが、実際、何かパワーを秘めたものなのでしょう。








夜は夜でハーンハリーリという素敵な町並が残る場所を練り歩いて、カイロの滞在は素晴らしいものでした。







私はこの賑やかな通りを歩くのが好きで、異国情緒あふれる旧市街を何時間もぶらぶらしていました。時おり誰かが話かけてきてくれたり、屋台で食べものを頬張ったりと、旅先ではそんな何気ない時間に幸せを感じます。旅はいつも人々の中を自由に泳いで、何か面白そうな匂いのする雑踏へ踏み込んでいきます。













ハーンハリーリはとにかく賑やかな通りですが、いつも一人で行動する旅のスタイルも、毎日お祭り騒ぎのインドやエジプトでは寂しさは感じません。夜になってもまだまだ明るい。そんな調子で夜が更けていきます。


















翌日は宮殿を眺めに行った帰りに別の旧市街をぶらぶら歩いていきました。







観光客などほとんど来ないような賑々しいマーケットで、ここでは沢山の人々が笑顔を見せて話しかけてきてくれます。それが楽しい。エジプト人はとても人懐っこく、彼らと過ごせた時間はとても心地よいものでした。通りをひたすら歩いて歩いて、人々の生活の中に融け込ませてもらうのが好きです。





そしてその夜、「ここ冷凍庫の中?」と思うような凍える深夜バスに乗りこみ、エジプト人のおっさんとのブランケット争奪戦に見事に敗北し、夜通し震えながら砂漠をつっきって南下し、朝方、ルクソールの町へ到着しました。




ルクソールは、エジプトの中でも一番好きな町のひとつでした。泊まった宿の主人も物静かだけど親切で、狭い部屋ですが窓から人々の生活が見えて気にいりました。











(エジプトではどこでもこうして店先でシーシャ(水タバコ)を吸いながらシャーイ(砂糖たっぷりの紅茶)を飲んでお喋りする光景があって、それがとても素敵に見えました)

ルクソール神殿、ナイル河、王家の谷、カルナック神殿など、ルクソールは見どころの多い歴史ある町。








町並に沿うようにナイル川が雄大に流れていて、陽の沈む西の彼方には王家の谷のあるナイル西岸が美しい幻想のように見えます。









ファルーカという帆舟の客引き、そして客引きたちが「エジプシャンフェラーリ」と呼んでいる馬車の客引きたちがすごいのだけど、旅のこういった光景ややりとりもまた楽しい(たまに面倒)。








ちょうど満月でルクソール神殿には丸い月が浮かんでいました。






翌日、フェリーに乗ってナイルの西岸へ。

私のような貧乏バックパッカーはレンタサイクルを借りて巡るのが一番なので、船着き場を降りると観光客相手に待ち構えていた、自称キャプテン・ジャックスパロウから愛すべきオンボロ自転車を借りて、西海岸を王家の谷へ向かってGO。




ハトシェプスト葬祭殿は素晴らしい場所でした。





とにかく坂の多い西岸を王家の谷の前あたりまで走りに走っていると「絶対にパンクするなよ」と思っていた自転車がものの見事にパンクし、やれやれと途方に暮れました。走り去っていく何台もの観光バスを横目に自転車を押してなんとか王家の谷へ(写真を撮るのを忘れた)。




もはや夕暮れも近づいて王家の谷どころではなくなりつつもぶらぶらして、帰りは受付の優しいお兄さんの計らいで車に自転車を突っこんで港まで送ってもらいました。
その時見た緑の多い西岸の夕焼けの景色は、とても平和で、のどかで、美しいものでした。










夜は夜で広場で仲良くなったおじさんに招かれアパートで美味しいハイビスカスティーをご馳走してもらったりと、ルクソールは何かと絆を感じることの多い素敵な町でした。










エジプトの国民食、ターメイヤサンドとコシャリ。ひとつ20~40円ぐらいだったかな?
エジプトにいる間は毎日屋台でこのターメイヤとコシャリを食べていました(何しろ安いので)。






屋台によって味が微妙に変わるのも楽しい。ルクソールはひとつオマケしてくれる屋台があったので毎日そこです。






一ヵ月の旅程だったエジプトも、もっと余裕があったらルクソールにいたかったのですが、2泊ほど満喫した後でルクソールを後に列車でアスワンへ。




(本当はカイロからルクソールへも列車で行くつもりだったのですが、長蛇の列ができてゴッタ返している切符売り場に一時間並んでようやく順番が回ってくると「ここはエジプト人専用売り場だ!外国人はアッチだーーーーーーーッ!次ッ!」とどえらいどやされて「もういいや」とプラン変更したのでした)

ルクソールは出合った人々もとても素敵で、またいつか来たいと思える、何か絆を感じる町でした。





「アスワン~アブシンベル~イシス神殿のアンダラ編」につづく。