2021/03/11 13:03
(写真はほとんどダラムサラでのもの)
【 北インド、カイラスとの出会い 】
店主が初めてカイラスクォーツに出会ったのは北インドの「ダラムサラ(ダラムシャーラー)」という町でした。
ダラムサラは水晶の産地であるクル渓谷の西に位置しており、またチベットから亡命したダライ・ラマが移り住むチベッタンの人々の中心ともなっている町です。
ダラムサラはえんじ色の袈裟に身を包んだ僧侶たちをあちこちで見かけるのでまるでチベットにいるような感覚になりますが、そこは標高2000メートル近くある高地の緑が豊かな美しい場所でした。
また、ヨガのアシュラムや曼荼羅、シンギングボウルやさまざまなクリスタルが立ち並んでいて、どこかスピリチュアルな雰囲気の町でもあります。
山の中腹にある「マクロードガンジ」と呼ばれる小さなメインストリートはそれらの店が軒を連ねていて楽しいものでしたが、クル渓谷で採れたと思われるクリスタルや加工された石たちにはとりわけこころ惹かれました。
夕暮れ時、マクロードガンジを散歩しているとふと小さな石屋が目にとまり中を覗いてみると、その中にひときわ輝いて見えたあるクリスタルがありました。とても興味が湧いてどこで採れたものか尋ねてみると、店主は「マウント・キャラーシュだよ」と応えました。
「その石はこの石と仲良しだから、こっちも買ってくれるなら安くしとくよ」とも。
こういった時は惹かれるきもちにぜんぜん嘘をつけないので、旅先で出会ったその素晴らしい石を2つ引き取ることにしました。
正直その産地に心当たりもなく「まぁここいらへんのものだろう」と呑気に考えていたのですが、宿に帰ってその石たちを眺めていると、ふと「キャラーシュとはカイラスのことなのでは?」と閃きました。
(場所によってカイラーサなどの呼び名があります。何しろいくつかの国や宗教で崇められている山ですので)
だとしたらこれは偉大な一期一会だと思いました。翌日、カイラス山のあの神々しい姿の写真を見せると「そうそう、ここだよ」と店主。
驚きました。
彼らがこんなところでわざわざ嘘をつくとも思えないし(そもそもカイラスと説明してもその希少さをわかる人は石が好きなほんの一握りですから)、チベットの人々がたくさん住まうこの町でなら、チベット自治区にあるカイラスの水晶があったとしても不思議はないかも知れない…。
なんだか不思議な出逢いと縁に静かに驚きつつも、旅の相棒としてその2つのクリスタルを連れて、さらに北へ北へと進んでいきました。
実はインドの旅へ出る数日前、ある人から「あなたはインド人だった時にカイラスの巡礼をしていたことがあるね」と言われていたのでした。
今、その石はまったく別の石のようにクラックと虹と輝きを増していて、完全に目を覚ましています。
【 カイラスという石 】
カイラスクォーツはチベット自治区の聖山「カイラス」のエリアで産出するクリスタルです。
カイラス山はチベット語ではカン・リンポチェ(尊い雪山)やカンティセ(魂の山)と呼ばれており、古くからチベット仏教、ボン教、ヒンドゥー、ジャイナなど、宗派を超えて聖地とされてきた偉大な山です。
カイラス山はチベット語ではカン・リンポチェ(尊い雪山)やカンティセ(魂の山)と呼ばれており、古くからチベット仏教、ボン教、ヒンドゥー、ジャイナなど、宗派を超えて聖地とされてきた偉大な山です。
標高6000mを超えるカイラスの頂はとても神々しく特徴的な姿をしているのですが、神さまの住処であるとされているそこは未だ未登頂のままだそう(聖地なので登頂が許可されないそうです)。
唯一、古代チベットの聖者「ミラレパ」だけが法力によってカイラス頂上まで登ったという伝説が残っています。
このように聖なる山として信仰されているカイラスですが、今でも信者たちが古くからの巡礼地としてこの険しい雪山を訪れています。
写真で見るとそこは美しく神聖な気配が漂う雪山。
カイラスという名はもともとサンスクリット語で水晶を意味する「ケーラーサ」に由来すると言われており、古くはチベットの修行僧が法力を高めるためにカイラス山に登り、そこから水晶をひとつ生きて持ち帰ってくる、という修行があったといいます。
とても険しい巡礼の旅ですが(本当に命がけですよね)、そこでのクリスタルをひとつ持って帰ってくるというのは、なんだかロマンですね。
そんな雪山に座すカイラスクォーツ。
採掘できるのも雪解けのシーズンに限られており、標高の高い場所での手掘り採掘ですから、そこから日本までのルートを考えるとそれこそ巡礼の旅路みたいですが、とても希少で、そして特別な石だと思えます。
おおむね店主が眺めてきたカイラスというのは雪山のように白みがかった石肌をしていて、そして何より「清浄さ」を感じるものでした。清浄さと神聖さは、この石に関するキーワードだと思います。
おおむね店主が眺めてきたカイラスというのは雪山のように白みがかった石肌をしていて、そして何より「清浄さ」を感じるものでした。清浄さと神聖さは、この石に関するキーワードだと思います。
ある朝起きたらこのまま雪解け水みたいに溶けて消えてるんじゃないかな?というように、フっと融け出しそうな無垢さと、崇高さのようなもの。
いくつも並んでいるカイラスたちを眺めていると、そこはカイラス山のように雪山そのもののように見えます。そして彼らは多くの石とはその「光り方」「響き方」のようなものが違うことがわかります。
カイラスは本当に雪解け水のようなピュアさととても繊細なものをもっているのですが、それは弱々しいものではなく、不可侵の神聖な光のような感じ。白く澄んでいて、奥が深いもの。
カイラスは雪解けの「光と浄化の響き」をそのまま結晶に閉じ込めたような石だと思います。そしてちょっと宇宙的かな?
カイラス山そのものも宇宙にとても近い場所ですが、この石は地球に遺されている石の中でもとても「秘められた石」のひとつのように思えます。
カイラスはけして近寄りがたい石ではありませんが、場所のイメージも相まって神聖なものに触れている感覚になります。この地球が産んだものではあるけれど、とても清らかで、穢れのない宙(そら)からの贈り物のような感じ。人によってはちょっと宇宙を感じるものでもあるかも知れません。
カイラス山のクリスタル、というだけで特別な匂いをもっていますが、この石はそんな穢れのないところからやって来て、ずっと無垢なままそこにいてくれます。ただ変わらない神聖さをもつ石として。手にとれる神聖さと清浄さですね。
店主自身もとても好きな石ですが、こういった石って時に時間も枠も飛び越えて、魂にまで響いてくる絆を感じます。彼らは静かだけれどとても奥深い叡智をもった、永遠に若い姿の長老みたいな感じ。永遠に清らかな雪解けのひかりのような感じ。
そんなことを感じる石です。