2020/11/19 13:13






【 フェアリーオパール(メニライト)という石について 】



この石の起源を語っているととっても長くなってしまうのですが…こころ惹かれる方にはぜひ読んで頂きたい物語です。

オパール質も含んでいますし、調べていく内に大学院助教授の論文などのかなりマニアックな迷宮へと足を踏み入れていたのですが、「自分は成分オタク」と言い聞かせながらこの石の神秘を解き明かしたいと思いました。



フェアリーオパールは別名を「メニライト」と言います。パリのメニルモンタン地方で産出されたことから名づけられました。
スペイン、モロッコ、フランス、日本の能登半島などからも産出されていて、古くは菩薩石、仏石、小ぶり石など、愛嬌のある名前で呼ばれていたよう。

この不思議な姿をした石灰のような鉱物は、一体何からできているのでしょうか?
フェアリーオパールは、一言で言ってしまえば「珪藻やその他の不純物がオパール化したもの」です。

珪藻は世界中の海や川や湖、どこにでも生息している植物のプランクトン。とても微小で、多くは0.1mm以下の体をもった単細胞の光合成生物です。

この珪藻たちの特徴は「シリカの殻」をもっていること。
メニライトを語る上でも大切になってくる「シリカ」とは「二酸化ケイ素」のことですが、ではこの二酸化ケイ素とは一体??

それは地殻を構成している重要な物質のひとつで、そして私たちが「水晶」と呼んでいるものを構成している石英は、この「二酸化ケイ素が結晶したもの」です。

つまり、珪藻は「クリスタルの素となる物質の殻をもった生命体」ということになります。
なんだかこの時点でものすごいロマンを感じてしまいますが、珪藻は「ケイ酸」と呼ばれる成分を体に取りこみシリカの殻へと置換するそうです。


「フェアリーオパールは珪藻がオパール化したもの」と書きましたが、このメカニズムについて…

オパールは古代の貝や樹木、哺乳類の歯や化石などがケイ酸化して生成されることがあります。

珪藻たちはそのシリカの殻の性質ゆえ、死滅してもその殻は沈殿して堆積物に残ります。
その大量の殻の化石からなる堆積物が、私たちが漆喰などに使用している「珪藻土」と呼ばれているものです。つまり「珪藻たちの大量の殻の化石」ということですが、時にはそれは厚さ10メートルほどにもなるそう。

海などで珪藻が大量に死滅すると死骸の中の有機物は分解されていくそうですが、ガラス質の殻だけは残り、それが堆積して珪藻土になります。

フェアリーオパールはその珪藻土の中で生まれる石だと考えられています。

この不思議な形が形成される過程について詳しいことはわかっていないのですが、「珪藻のシリカ質の殻やその他の不純物が珪藻土の中でケイ酸に置き換わり、オパール化したもの」がフェアリーオパールだと考えられています。

つまり「珪藻たちの亡骸がオパール化した石」、と言えるのだと思います。

含有されている詳しい成分は不明なのですが不純物を多く含んでいるそうで、もともと海や水場だった珪藻土ですから、巻貝やその他水の生物たちの痕跡がメニライトに残ったものもあるようです。きっと海や水に沈殿していた素敵な物質をたくさん含んでいるのでしょうね。

フェアリーオパールの中実は半透明のコモンオパールになっていて、表面はカルサイト系から成る不純物だという話もあります。

また、フェアリーオパール誕生に欠かせない「珪藻」たちの姿ですが、調べてみると彼らは本当に宇宙です(笑)宇宙の原理やメカニズムそのもののよう。

ご興味の方はぜひ光学顕微鏡などで見た彼らの姿を調べてみてください。シリカの殻は非常に精巧で、美しく、細緻で幾何学的な模様が刻まれています。極小の生命ですが、とても神秘的な生き物。

さらには、珪藻の殻を成している二酸化ケイ素はその素となるケイ酸から、どのような循環で造られるのでしょう?

諸説あるのですが、それは地中の鉱物が風化作用によって河川などを通じてケイ酸として海洋に流れだし、珪藻たちの元へ運ばれるよう。

つまり、鉱物と生命の間に起こっている自然界の循環によって、この生命は誕生するようです。
勿論すべてではないにしろ、鉱物から海へ流れだしたケイ酸成分が、珪藻のシリカの殻を作るきっかけとなり、そしてまた珪藻の亡骸である堆積物が新たな鉱物を生み出して……なんという大循環ドラマでしょうか。

珪藻は地球上の循環になくてはならない存在のようで、この小さな体たちが私たちに必要な諸要素を生み出してくれているようです。なんとも神秘の存在です。

フェアリーオパールは、そんな素敵な生命から生まれた石です。


【 フェアリーオパールの響き 】


納得いくまで調べようと思ったらものすごい長々と説明してしまいましたが…本当に、その起源からくる物語はとても神秘的です。
例えばソープストーンがインナーチャイルドによいといわれているように、この石も、自分の中にある素朴さや純朴さ、イノセンスのようなものを呼び起こしてくれる石。

この石は「Innocence(無垢)」という言葉が一番しっくりとくる気がします。
自分の中にもともとあるやわらかくて丸いもの、穢れのないものを思い出させてくれるような。

この石を珪藻たちのスピリットが象ったと感じても、不思議ではないと思うのですよね。実際、そんな風なのではないでしょうか。

こんな愛らしくて無垢な姿に形を残して生まれ変わった、珪藻たちの循環するエネルギー。
彼らの生まれ変わりのような石といいますか。

形成される過程は地球の自然界の営みそのものですし、この石を調べて・感じていく中で「風の谷のナウシカ」の世界観を思い出していました。

珪藻たちのあの姿は光学顕微鏡などで見ると本当に宇宙です。
宇宙の幾何学というか、美しい神聖幾何学のパターンが横たわっているように思えます。

ある意味でとても宇宙的に思える珪藻たちですが、イメージとしてはクリオネのような宇宙の天使、または自然界の小さな天使存在たち。
それは自然界の元素(エレメント)を司るような、微細なものだけれど、とてもエンジェリックで無垢なものをもっているもの。

または「もののけ姫」に「コダマ」という森の精が出てきますが、イメージとしてはちょうどあんな風で、とても無垢で、「防御する」という概念すらない純朴な存在たち。

この石の響きも同じように感じます。


誰が名付けたかわかりませんが、「フェアリーオパール」という名前は本当にそのままだな~と思います。


※色々と書きましたが、ここに書いてあることは店主が調べた範囲の店主の理解の上で、ということです。混乱するぐらいに諸説ありますし、これが絶対的に正しいフェアリーオパールの起源、という訳ではなく、あくまでご参考までに読んで頂ければと思います。